この記事には、ネタバレが含まれますので、ご注意ください。
スコア : ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
不可解な死。そして、答えを求め彷徨う人々にそっと手を差し伸べる優しいミステリーでした。
作品情報
- 「アンナチュラル」
- 放送日:2018年1月12日〜3月16日
- 脚本:野木亜紀子
- プロデューサー:新井順子、植田博樹
- 演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、村尾嘉昭
- キャスト:石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、薬師丸ひろ子、松重豊、竜星涼、大倉孝ニ、尾上寛之…他
今作のドラマは、2018年1月12日から3月16日の毎週金曜日にTBS系にて放送されていたテレビドラマ。ギャラクシー賞やコンフィデンスアワード、その他にも数々の賞を総なめにしました。
主題歌「lemon」は、米津玄師により書き下ろされた楽曲です。「大切な人の死」をテーマにしたこの曲は、ドラマとの親和性もあり、切なく泣ける名曲となっています。
作品の舞台
『不自然死究明研究所』
通称UDI(Unnatural Death Investigation Laboratory)で働く法医解剖医の三澄ミコト、同じく法医解剖医でベテランの中堂系、臨床検査技師でムードメーカーな東海林夕子、新人の九部六郎や所長の神倉保夫など、個性豊かなチームが「死」の向こう側にある真実を追い求める。
あらすじ(全10話)
1話 名前のない毒
ある一人暮らしの若者・高野島渡が亡くなった。死因とされたのは、虚血性心疾患(心不全)。しかし彼は、山登りが趣味で体も丈夫。そして、まだ若かったため、両親はこの死因に納得がいかなかった。何か他に原因があるのではないかと、死因の究明を求め、UDIにやって来たのだ。
調べる内に急性腎不全の症状を見つけたミコト達は、薬毒物の可能性を探るが原因は掴めない。そんな中、高野島渡が死亡した翌日に謎の死を遂げた同僚がいたことが判明する。そして、その女性と高野島渡は不倫関係にあったともっぱらの噂だった。
高野島渡のアパートを調査していると、彼の婚約者・馬場路子が現れる。彼女の仕事は、劇薬毒物製品の開発だった。毒物は、現在存在する毒と照合することで特定する。彼女には、未だ名前すら存在していない未知の毒物を作り出すことも可能だ。証拠のない敵にどう立ち向かうのか…!
2話 死にたがりの手紙
警察から集団練炭自殺事件についての調査依頼が舞い込んでくる。事件性がないと言う毛利刑事だが、ミコト達はラボで解剖することに決める。
発見された遺体のうち、3人の死因は一酸化炭素中毒だったが、もう一人の若い女性は”凍死”であることが判明する。そして彼女の胃の中から「ユキオトコノイ タスケテ花」と書かれたメモが見たかった。
花ちゃんに一体何があったのか…ミコト達は、事件の究明に挑む。
3話 予定外の証人
人気主婦ブロガー殺人事件の代理証人として出廷することになったミコト。被告人は夫の要一、彼は妻からの精神的DVによるストレスにより殺害に至ったと容疑を認めていた。しかし、凶器とされた包丁と遺体の傷跡が異なることに気付いたミコトは、この矛盾点について指摘する。それを聞いた夫の要一も一転して無罪を主張するが、これには裁判も大混乱。
やり手敏腕検事・烏田と法廷にて対決することになったミコトだが、女性だからという理由でマスコミから攻撃の的になってしまう。この不利な状況をどう打破していくのか…!
4話 誰がために働く
弁護士であるミコトの母・夏代からの依頼で、バイク事故により命を落とした工場の従業員・佐野の死因を究明することになったミコト達。争点となったのは、責任の所在。
- 勤めていた工場での過労
- バイクの故障
- 病院の診断ミスによる病死
賠償を払いたくない三銃士は、責任の所在をなすりつけ合う。そんな中、佐野の妻は、140時間以上もの時間外労働、そしてその手当も未払いであることを訴えたが、工場は時間外労働などなかったと言い張る。
ミコト達は、原因を特定し、遺族たちを救うことができるのか…!
5話 死の報復
ある日、鈴木巧という人物がUDIを尋ねてくる。溺死とされた彼の妻は、海へ飛び込む姿が目撃されており、自殺と判断されていた。しかし、二人は結婚間近の幸せの絶頂期だった。そのため、鈴木は妻が自ら命を断つわけがないと調査を依頼してきたのだった。
解剖に取り掛かったその時、葬儀社の木林が血相を変えてやってくる。鈴木が持ち込んだ妻の遺体は、葬儀社から盗んだものだった。死体損害罪となってしまったミコト達はどうなってしまうのか。そして、鈴木の妻・果歩に一体何があったのか…
6話 友達じゃない
東海林は、高級ジム主催の合コンパーティーに参加していた。翌朝、東海林はホテルの寝室で目を覚ますが、隣には昨日パーティーで知り合った権田原が眠っていた。驚く東海林だったが、彼が息をしていないことに気付き、急いでミコトを呼び出した。
一方、別の場所では、同じ高級ジムのメンバーである男性が突然死していた。二人ともに耳に火傷のような跡があり、警察は、何者かによる連続殺人事件と判断した。そして、その第一容疑者として東海林が疑われることに…
7話 殺人遊戯
ミコトの弟・秋彦の頼みにより、法医学に興味を持つ一人の生徒とやり取りをすることになったミコト。しかし、ミコトに届いたメールのURLには、殺人者Sと名乗る生徒が別の生徒Yを殺害し、その現場から実況中継をしている姿が映し出される。そして、凶器や現場の状況から死因を特定するようにとミコトに挑戦状を叩きつける生徒S。もし、時間内に死因を特定できなければ、人質である生徒Xの命もないと言う。
絶体絶命のミコトだが、遠隔診断での死因の特定は可能なのか…そして生徒Sの目的とは…!
8話 遥かなる我が家
雑居ビルで火災が発生し、10体もの遺体が発見される。どの遺体もひどく損傷し、黒く焼けこげており、身元の特定は難航を極めた。しかし、調べていくうちに不可解なことに気付く。9番目の遺体は亡くなる前に頭を強く殴られた可能性があり、また、体にはロープで縛られたような跡が残っていた。9番目の遺体・町田三郎は前科持ちのヤクザだった。殺人をカモフラージュするための火災だったのではないかと疑うミコト達。
そんな中、一人の男性が火災から生き延びていたことが判明する。9番目の男は殺害されたのか…火災が起きたその現場で一体何が起きていたのか。真実とは…
9話 敵の姿
火災が起きた隣の空き家に置かれていたスーツケースの中から女性の遺体が発見される。女性の口の中には「赤い金魚」の跡が残されていた。中堂の恋人・夕希子が殺された際にも残されていた「赤い金魚」。連続殺人事件だと毛利刑事に訴えるが、関連性はないと見なされてしまう。ミコト達は、女性の遺体を持ち帰り解剖することに。女性の胃の中の内容物からは腐敗臭がしていた。女性の死因は一体…
そんな中、週刊ジャーナルの記事に不審な点を見つけた所長の神倉は、UDIの中に情報をリークしている人物がいるのではないかと疑う…
10話 旅の終わり
中堂の恋人の夕希子を含む複数の殺人事件の容疑者が出頭する。犯人である高瀬は、遺体を解体したことは認めたが、殺害に関しては容疑を否認していた。彼が被害者を手にかけた証拠がなければ、殺人罪に問うことができない。そんな中、ジャーナリストの宍戸が書いた高瀬の殺人告白本が出版され、世間の注目の的となる。唯一証拠になりそうな本の内容は、妄想だと言い張られ、手も足も出ないミコト達。
この強敵にどう立ち向かうのか…最後の戦いが始まる。
ネタバレなし感想
日本のドラマはあまり観ない筆者なのですが、これは本当に面白かった…!
泣けるドラマと話題でしたが、たしかにグッとくる。個人的には巧妙なミスリードやミステリー展開、社会問題も練り込まれた脚本に唸ってしまいました。
これは邪道だと言われてしまうかもしれませんが、相棒好きの私からすると、野木亜紀子氏の脚本は、太田愛氏と櫻井武晴氏のハイブリッドといった印象を受けました。人情や感情に訴えかける太田愛脚本、社会問題や組織に斬り込む櫻井武晴脚本。似た側面を持ちながらも、死や生について考えさせる野木脚本の妙。それに加え、UDIラボのみなさんの軽快でテンポのいいやり取り。この”ゆるさ”がとても心地良い。
最高のコメディであり、最高のミステリーでもあり、最高のヒューマンドラマでもある。このチームをずっと眺めていたい、彼らの冒険をずっと追いかけていたい。そう感じさせてくれる映画やドラマは多くありません。このドラマは間違いなくそのうちの一つ、愛おしく生きることの尊さを感じさせてくれる大好きな作品です。
ネタバレあり感想
個人的に印象に残ったエピソード
予想外のラスト
5話 死の報復
妻の溺死、しかも自殺だと告げられた夫からの解剖依頼。葬儀社の木林が駆けつけたことで解剖は中断、ミコトもあわや遺体損壊罪となるところだった。遺体は両親の元へ戻されたが、納得のいかない中堂とミコトは独自で調査を継続。中堂のアパートに一人ずつ呼び出されるあたりは笑ってしまいます🤣
難点だったのは、目撃者がいたこと。目撃者が見た人物は本当に妻の果歩だったのか。真相は、鈴木巧の同僚の女性が幸せそうな果歩に嫉妬し、海へ突き飛ばしたというものでした。そして、最悪な事態が起こります。鈴木が犯人の女性を刺してしまうというラスト。主人公の説得により、踏みとどまることが多い局面で、トドメを刺すこの衝撃。そして、中堂の儚くも空を見上げる姿が美しく、どことなく晴れやかな姿に複雑な感情を抱きました。
やり切れない思い
7話 殺人遊戯
殺人の現場を生配信する生徒S、彼は自身が殺したという生徒Yの死因を特定するようミコトに挑戦状を叩きつけた。
実際は、いじめの実態を明らかにするため、被害者生徒が自身の命と引き換えに加害者側に罪を着せる復讐計画でした。しかし、いじめの加害者達は万引きで捕まっており、作戦は狂ってしまう。それを知らずに作戦を実行してしまった横山。そして、それを無駄にしまいと白井は、このような生配信を決行したのだった。
見始めた時は、起こっていることのクレイジーさに怖くなりましたが、真実はなんとも悲しくやるせない結果でした。。。
心に突き刺さる台詞が多くありました。
「法医学的には自殺。でも私は殺されたんだと思う。法律では裁けない、いじめという名の殺人」
「あなたの人生はあなたのものだよ」
その中でも特に記憶に残っているのは、中堂がいじめられていた白井くんにかけたこの言葉
「死んだ人間は答えてくれない。この先も。」
残された人間は、この先も生きていかなくてはならない。恋人を亡くした中堂が言葉にするからこその重みと優しさに胸が締め付けられました。
まとめ
答えを求め、彷徨う人々にそっと手を差し伸べる優しいミステリー。UDIのみんなが私達の隣にそっと寄り添い、励ましてくれているような、そんな暖かさと親近感があります。
二転三転するストーリー展開、挑戦的で、かつ普遍的なメッセージ。そして、死という逃れられないテーマに私達がどう向き合い、答えを出し、進んでいくのか。人生の節目に会いに行きたい、そう感じさせてくれる作品でした。
映画情報
2024年8月23日公開予定「ラストマイル」にアンナチュラルUDIラボチームが6年ぶりに帰ってくる!!
11 月、流通業界最大のイベントのひとつ“ブラックフライデー”の前夜、世界規模のショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。
やがてそれは日本中を恐怖に陥れる謎の連続爆破事件へと発展していく――。
下記公式サイトより引用
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