偏屈でお金にしか目がない男がヒーローに!?でも、彼には愛があった。
映画情報
- 『ヒーロー 靴をなくした天使』
- 公開日 : 1993年4月24日(日本)
- 制作総指揮 : ジョセフ・M・カラッシオロ、アルヴィン・サージェント
- 監督 : スティーヴン・フリアーズ
- 制作 : ローラ・ジスキン
- 脚本 : デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
- 撮影 : オリバー・ステイプルトン
- 編集 : ミック・オーズリー
- 音楽 : ジョージ・フェントン
- 出演者 : ダスティン・ホフマン、アンディ・ガルシア、ジーナ・デイヴィス、ジョーン・キューザック、スージー・キューザック、チェビー・チェイス、スティーブン・トボロウスキー他
公式サイト
あらすじ
コソ泥のバーニーは、裁判で有罪判決を受けてしまう。6日間の執行猶予付保護観察処分となり、収監命令を待つ身。そんなある日、彼の目の前に飛行機が不時着する。成り行きで救助することになったバーニー。彼は名声に興味がないため、そのままその場から立ち去るのだが、、、
ネタバレなし感想
結論から言うと、めちゃくちゃ面白かった!
この作品に、悪い奴はいない。いや、悪い奴だらけなのだが、嫌いになれないというべきか。一癖も二癖もある登場人物達が織りなすハートフルなドラマになっています。
人が信じてしまえば、たちまちそれが”真実“になってしまう。マスメディアの報道に担ぎ上げられ、踊らされる人々。真実と事実の境界線。コメディでありながら、考えさせられる内容でもありました。
ネタバレあり感想
ここからは、ネタバレを含みますので、ご注意下さい。
どうしようもない男
“目立たないことが処世術なんだ”
主人公のバーニーは、どうしようもない奴です。裁判中に新米弁護士の財布からお金を盗み、息子と行ったレストランで拾った財布もくすね、人生は不平等だと語る。
そんな男の前に、飛行機が不時着するのだ。悠長な事は言ってられない状況で、100ドルの靴の心配をしているバーニー面白い😂
飛行機の扉を開け、パニック状態の乗客達に踏まれるバーニー。泥だらけです。靴を探すバーニーに、少年が声をかけます。父親がいないと。崩れかけの飛行機の中へ何度も戻るバーニー。この少年と自分の息子が重なって見えたのだろうなと感じました。この時点で、このどうしようもない男が愛おしい!
しかし、この事態で息子との映画の約束に遅れてしまい、元妻から猛反発を食らう。その上、仕事もクビになってしまった。
誰もバーニーを信じようとはしない。嘘つきで人助けなんてするキャラではないからです。ここは、狼少年やピノキオを思い起こさせました。ただ、さすがにみんな、もう少しバーニーの話を聞いてあげたら?と思ってしまう笑
ヒーローとは
“人生は実に皮肉で複雑だって事だ”
謎の人物、104便の天使は誰なのか。手がかりは片方取り残された靴。人々は同じサイズの靴を手に我天使だとテレビ局に詰め寄せました。まさしくシンデレラ!
https://www.sonypictures.jp/he/1377
そしてついに、探し求めたヒーローが見つかったぞ!とテレビは大騒ぎ。しかし、現れたのは、バーニーではなく、まったくの別人”ババー”だった。
おまえかーーーーーい!と心の中で叫びました笑😂
ババーは、バーニーが唯一、飛行機事故のことを話した人物。バーニーになり代わり、ヒーローとして人気者になるババーに怒りを隠せないバーニー。といっても、バーニーの怒りの矛先は名声や有名を奪われたからではない。謝礼ももらえず、元妻には怒鳴られ息子にも会えず仕舞いだからだろう。
そして、勾留のタイムリミットが近づく。家族にお別れの電話をするシーン、ダスティン・ホフマンの涙を堪えながらの演技が切なすぎました。
ヒーローは、作り上げられてしまった偶像。裏にいる本物のヒーローに気付けないのは悲しいことだなと感じました。
実はいい奴
“弱さと勇気が混在する普通の人間なんです”
飛行機事故の被害者の中には、リポーターのゲイルがいました。ババーに助けられたと思っているゲイルは、ババーと恋に落ちます。ババーは、慈善活動をするなど優しさに満ちた人物です。そうなると、事が大きくなると共に嘘の罪悪感に苛まれていきます。
そして、最後にはビルから飛び降りようとします。バーニーは、説得を試みる。というより、嘘の代償として、自分に協力するように持ちかけます。
ここでも報道陣や群衆の思う”真実”とバーニーとババーの”事実”の相違が皮肉で面白い🤣緊迫したシーンのはずだが、コーヒーを飲んだりとなんだか可愛い。
https://www.sonypictures.jp/he/1377
バーニーはここで、狙わずしてヒーローを救ったヒーローにもなった。ババーも、バーニーを救ったことで本当のヒーローだ。
人間は弱くて、狡賢くて、欲深い生き物だ。だからこそ、その他大勢ではなく、信じてほしい人物が、事情を知った上で自分を信じてくれている。それだけで、幸せなことだなと感じました。
最後に
わたしはてっきり、最終的には真実が明かされ、ババーは嘘をついた偽善者として裁かれるのかと思っていました。わたしの安直で凡庸なあらすじよりも、誰も不幸にさせない心温まるエンディング。
それにしても、アンディ・ガルシアに気づかなかった。髭を剃って、髪を切って、スーツを着た姿を見てやっとアンディ・ガルシアだったのか!と驚いた😂今度、アンディ・ガルシア好きの母にも見せてみようかなと思います。
ということで、ゆるい雰囲気もありつつ、暖かい優しさに包まれるヒューマンコメディでした。