英語には「get」を使ったイディオムがたくさんあります。日常的な単語なのに、使い方ひとつで意味がガラリと変わるカメレオン的な存在です。
今回は、その中でもあまり聞きなれない面白い英語表現を集めてみました。
それでは、実際の意味・使い方・ニュアンスをわかりやすく紹介しながら、ネイティブがリアルに使うフレーズを映画やドラマのセリフなどから一緒に見ていきましょう!
【Get by】
なんとかやっていく・最低限の生活をする・ギリギリ乗り切るという意味をもつイディオムです。
生活、経済状況、困難な状況などで「最低限でどうにかやっていく」という意味で使われる表現です。リッチな生活をしているわけではないけれど、「まあ、なんとか生きている」というニュアンスです。
例文
- I don’t earn much, but I get by.
収入は多くないけど、なんとかやってるよ。 - It was a tough year, but we managed to get by.
大変な1年だったけど、どうにか乗り切ったよ。
🎬『グリーンブック』での使用例
天才ピアニストのドクター・シャーリーの運転手として旅をすることになったトニーは、その道中、奥さんに手紙を書きます。
しかし、手紙など書き慣れていないトニー。見かねたシャーリーが、彼の手紙を添削し始めます。
その場面で、トニーが手紙に書いていたのが次のセリフ。
“But you know me,I get by. I’m a good bullsh**ter.“
でも、俺のことは知ってるだろ。なんとかやってるよ。口はうまいからさ。
「上流階級の人たちを相手にしてるけど、俺なりにうまくやってるよ」という意味でこの表現が使われています。

この2人の友情は、ただの友達関係というだけでなく、まるで母親と子どものような一面もあって、とても愛らしく、心が温まります。
【Get the hang of】
意味
コツをつかむ、慣れる、やり方がわかってくるという意味のイディオムです。
「最初は難しかったけど、だんだん慣れてきた」「どうやればうまくいくかわかってきた」という時に使う、とても便利なフレーズです。
例文
- It took me a few days to get the hang of using chopsticks.
箸を使えるようになるのに数日かかったよ。 - Don’t worry, you’ll get the hang of it soon.
心配いらないよ、すぐ慣れるから。
🎬『インクレディブル・ファミリー』での使用例
『インクレディブル・ファミリー』では、ヒーロー活動が禁止されている世界で、イラスティガールがヒーロー活動の復帰第一人者として選ばれ、新しい装備であるバイク“エラストサイクル”を与えられます。
その出動シーンで、慣れないハイテクバイクを前にして、ヘレンがちょっと戸惑いながら言うセリフがこのセリフ。
“This one’s electric… means it’s torquey. I’ll get the hang of it.”
これは電動ね。トルクが強いってことか。まあ、大丈夫。すぐ慣れるわ。
ここで使われる “I’ll get the hang of it.” は、「すぐコツをつかめる」という意味で使われています。新しい何かに挑戦しているときに、このフレーズはピッタリな表現だといますよ!
【Get cold feet】
意味
土壇場で怖じ気づく・急に不安になってやめたくなるという意味のイディオムです。
何か大きなことに挑戦する直前で、突然不安や恐怖が湧いてきて、気持ちが引いてしまう状態を表す表現です。「臆病」というニュアンスも含みますが、時には「普通の人間らしい反応」としても使われます。
例文
- He got cold feet the night before the wedding.
彼は結婚式の前夜に怖じ気づいた。 - She was ready to go on stage, but then she got cold feet.
彼女はステージに上がる準備はできてたけど、急に怖くなった。
🎬『ハクソー・リッジ』での使用例
デズモンド・ドスは、武器を持たず人を救うという信念から、軍に志願しながらも武器を一切使わないことを決めていました。
そのために、周りからの理解を得られず、約束していた結婚式に出席できなくなるという重大な出来事が起きます。
その結婚式の場面で、フィアンセのドロシーに向けて、神父(?)と思われる男性が言葉をかけます。
“Sometimes men just get cold feet.”
たまに逃げ出す男がいるんだよ。
そんなデズモンドの事情を知らない彼らは、“結婚に怖気ずいた”と結論付けたというわけです。それでも婚約者のドロシーは、彼を信じ支え続ける、心打たれるシーンになっています。

「お願いです、神様。あと、ひとりだけ助けさせてください。もう一人…。」というセリフは、私にとって忘れられない印象的なシーンです…
【Get the picture】
意味
「状況や意味、真相を理解する」「話のポイントをつかむ」という意味のイディオムです。
文字通り訳すと「絵を得る」というイメージから、「全体像を把握する」というニュアンスで使われます。
例文
- After you explained everything, I finally got the picture.
全部説明してくれて、やっと状況が分かったよ。 - Before the meeting, I didn’t get the picture, but after their presentation, everything is clear.
会議の前はよく分からなかったけど、プレゼンを聞いて全て理解できたよ。
🎬『真実の行方』での使用例
弁護側は、被告アーロン・スタンプラーが二重人格であると主張し、彼の犯行には責任能力がない可能性を示します。この主張により、事件は一気に精神鑑定をめぐる複雑な裁判へと進展していきます。
この主張に対して検察側は、法廷でアーロンに再度精神鑑定を行うべきかを問われます。しかし、検察側はその必要を否定し、「これ以上の精神分析は不要である」として次のように述べます。
“I think we all get the picture here.”
この場にいる全員が、大体の状況は理解していると思います。
検察はこの言葉で、「これ以上議論を重ねなくても、もう十分に問題の構図を把握し、事実も明らかになっている」という判断を示しています。すでに十分な情報がある。これ以上は不要だと明確に線を引いているのです。

この作品は、何も知らずに観てほしい映画No.1です。
【Get over】
意味
困難やつらい出来事を乗り越えることを意味するイディオムです。
心の傷、失恋、ショック、悲しみ、失敗、病気などから回復する・立ち直ることを表します。
例文
- It was just a bad day.You’ll get over it.
ただの悪い一日だっただけさ。すぐに立ち直れるよ。 - It took me months to get over my ex.
元恋人のことを吹っ切るのに数ヶ月かかったよ。
🎬『ダイハード3』での使用例
一連のテロ事件を解決したブルース・ウィリス演じるジョン・マクレーンは、別居中の妻ホリーに電話をかけようとします。しかし、事件の渦中で何度もホリーの電話を後回しにしてしまい、マクレーンはこうこぼします。
“She’s gonna be pissed.”
ホリー、怒ってるだろうな…
そんな彼に、サミュエル・L・ジャクソン演じるゼウスが返した言葉がこちら。
“She’ll get over it.”
まあ、許してくれるさ。
この場面では、妻が怒っているだろうという前提の上で、ゼウスが「その怒りを乗り越える・立ち直るだろう」と軽く受け答えをしています。
つまり、「ホリーが怒っているけど、それは一時的なものだ」「時間が立てば問題は大したことではなくなる」というニュアンスを含んでいます。
【Get to do something】
意味
「〜する機会がある」「〜できる」という意味で使われます。
たとえば、普段はできないことを「今回は特別にやらせてもらえる」や、「待ち望んでいたことがついにできる」といったニュアンスがあります。文脈によっては、権利やチャンスを得たことへの喜びや期待感を表現したり、逆に珍しい出来事や限られた機会であることを強調する場合にも使われます。
例文
- She gets to travel around the world for her job.
彼女は仕事で世界中を旅することができる。 - We didn’t get to see the whole museum because it was closing.
閉館時間で、博物館を全部見る機会がなかった。
🎬『フォレスト・ガンプ』での使用例
トム・ハンクス演じるフォレストが、思いがけない展開から一流のアメフト選手として活躍し、「オールアメリカン・チーム」という全国の優秀選手に選ばれます。
そして彼には、なんと予期せぬ人物との面会が待っていました。
“They even put me on a thing called the All-America Team,where you get to meet the President of the United States.”
“オールアメリカン・チーム”っていうのに選ばれて、大統領に会えるんだって。
つまり、ここでの「get to meet」は「(一般人はそう簡単には)会えない大統領に、会わせてもらえる」「名誉な立場に選ばれたからこそ、得られるチャンス」ということを意味しています。
【Get behind】
意味
①【遅れる・滞る】
仕事や支払い、スケジュールなどの予定に遅れたり、間に合わないことを意味します。
②【~の後ろに行く・位置する】
物理的に物や人の後ろに移動することを指します。
③【支持する・応援する】
アイデアや計画、人に賛成したり支持したりすること。また、カジュアルに食べ物や飲み物などを気に入ったり、賛成したりする時にも使います。
例文
①I got behind on my homework.
宿題を期限内に終わらせられなかった。
②Get behind me!
私の後ろに来て!
危険な状況や緊迫した場面で、誰かを守るためによく使われる表現です。
③I don’t usually like macarons,but I can get behind this chocolate one.
私は普段マカロンは好きじゃないけど、このチョコのはアリだね。
🎬『トールキン』での使用例
若き日のトールキンが学校で出会った親しい友人たちと、文学、音楽、芸術、そして哲学について熱く語り合うシーンがあります。
その中でトールキンが「死者の国」について書かれた本を読んでいるシーンがあります。
北欧神話において、「間違った死に方」とは、病気や老衰によって平和に死ぬことを指します。勇敢に戦って死ななかった者は、「ヘルヘイム」と呼ばれる冥界へ送られるとされているのです。
そんな議論の中で、友人の一人ギルソンは、その考えに賛同の意を表します。
“Now,that’s an idea I can get behind”
その意見には賛同するよ。
しかし、ギルソンが賛成しているのは、単に「冥界に送られる」という考えそのものではなく、北欧神話に込められたもっと深い哲学、「死に方には意味があり、私たちの生き方が死に方を形作る」という考え方なのではないでしょうか。
平和に死ぬことが「間違っている」と考えるのではなく、彼は真剣に「何のために命を捧げるべきか」という問いに向き合っている。そのように感じます。
【Get through to someone】
意味
「相手に自分の気持ちや考えが伝わる」または「相手にやっと理解してもらえる」という意味で使われます。
また、電話がやっとつながるという意味でも使われます。
例文
- It took a long time,but I finally got through to my father.
長い時間がかかったけど、やっと父に気持ちが伝わった。 - I tried to call you all morning,but I couldn’t get through to you.
朝ずっと電話してたけど、つながらなかったよ。
🎬『スパイダーマン:ホームカミング』での使用例
一連の事件の黒幕がバルチャーことエイドリアン・トゥームスであることを突き止めた高校生ピーター・パーカー。トニー・スタークの部下ハッピーに何度も連絡を取ろうとしますが、相手にされません。
自分ひとりでも悪を止めなければと決意したピーターは、親友ネッドにこう指示を出します。
“Yeah.Just keep trying to get through to Happy.”
とにかくハッピーに連絡を取り続けてくれ。
この場合の「Get through to someone」は、ピーターがネッドにハッピーへの連絡を諦めずに試みるよう指示しており、「気持ちを理解させる」といった抽象的な意味ではなく、電話が通じるという直接的な意味合いで使われています。
Get wind of
意味
「(秘密や噂などの)情報を聞きつける」「(何かが起こることを)察知する」という意味で使われます。
この表現は、誰かがまだ広く知られていない話や計画、情報を偶然に、あるいは非公式に知る状況を指します。日本にも「風の知らせ」という言葉がありますが、噂などが風に乗って運ばれてくる=知ること、というイメージになります。
例文
- If the boss gets wind of this mistake, we might be in trouble.
もし上司がこのミスを知ったら、まずいことになるかもしれない。 - I got wind of their plan to change the schedule.
彼らがスケジュールを変更する計画を聞きつけた。
🎬『スポットライト 世紀のスクープ』での使用例
ボストン・グローブ紙のスポットライト・チームが教会の性的虐待とその隠蔽を調査している中で、マイケル・キートン演じるウォルターが「カーディナル・ローに知られる前に証拠を固めよう」と、慎重な対応をチームに指示する場面で使われているセリフです。
“We can’t let Cardinal Law get wind of this till we know what we have.“
私たちが何を掴んでいるのか分かるまで、カーディナル・ローにこのことを嗅ぎつけられてはいけない。
このように、「情報を知られてはいけない」「気づかれてはいけない」といった文脈で使われます。
Get kick out of
意味
「〜をとても楽しむ」「〜から強い喜びを感じる」という意味のイディオムです。
主に「楽しい・面白い・スリルがある」というポジティブな感情を表すカジュアルな言い回しです。
例文
- I get a kick out of making people laugh.
人を笑わせるのがすごく楽しい。 - She got a kick out of riding a roller coaster.
彼女はジェットコースターに乗ってめちゃくちゃ楽しんでいた。
🎬『トランスポーター』での使用例
今作に登場する敵キャラクターであるウォールが、ヒロインであるライに向けて放つ一言として使用されています。
“He’ll really get a kick out of this.“
父親はさぞ喜ぶだろう。
しかし、この映画の場面においては、「get a kick out of」は文字どおりの「楽しむ」ではなく、皮肉的な意味合いで使われています。
このセリフの直前、ジェイソン・ステイサム演じるフランクは事件の核心に迫ろうとし、ライの父親に関する情報を探っている最中。ウォールはこの状況に対し、「君の父親がこれを知ったら、さぞ楽しむだろうね」と挑発的に言い放つセリフになっています。
つまり、「本当は喜ぶどころか激怒するに違いない」という逆の感情をあえて「enjoy」という表現で言い換えた、ブラックユーモアまたは皮肉にあたる発言です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!これは、私自身の英語学習のメモとしてまとめたものですが、少しでも皆さんの学びのヒントになれば嬉しいです。これからも一緒に楽しく英語を学んでいきましょう!

