この記事にネタバレは含まれません。
本記事には一部センシティブな内容を含みますが、表現には配慮しています。

他人の感情に鈍感で「共感能力が欠如」しており、時には「残酷」で考えられないような「恐ろしい」ことを平気で実行に移すサイコパス。
すべての作品に共通するのは、彼らは一見無害であるということ。日常に潜みながら牙をむく機会を窺っている。
そんなサイコパス達の日常を描くスリリングな作品を紹介します!
デクスター
マイアミ警察の鑑識官として働く男の裏の顔はシリアルキラー!?
原作 | ジェフ・リンジー 「デクスター幼き者への挽歌」 |
キャスト | マイケル・C・ホール ジェニファー・カーペンター ジュリー・ベンツ ジェームズ・レマー デイヴィッド・ザヤス ローレン・ベレス…他 |
配信 | NETFLIX,Amazonプライムビデオ |
デクスター・モーガンには、マイアミ警察で血痕分析官として働くかたわら、法では裁けない凶悪な犯罪者を手にかけ、記念品として血液を収集するというシリアルキラーとしての裏の顔がある。ある日、“冷凍庫キラー”と呼ばれるシリアルキラーが現れ…
犯罪現場の血痕の跡から事件の全貌を推測する“血痕のスペシャリスト”デクスターには、裏の顔がある。
それは、抑えきれない衝動を持つシリアルキラーとしての恐ろしい顔。さらに、そのことを知った警官の義父からその衝動を実行に移した際の隠蔽方法を伝授されたなんとも特殊で類を見ない主人公です。
毎シーズンごとに異なるシリアルキラーが登場します。デクスターは彼らと対峙し、時には手を下していく。この敵となるサイコパスたちがことごとくろくでもない連中ばかりなので、むしろデクスターを応援してしまいます。
一見、無感情で人間性を繕っているようにも感じますが、彼なりに周りを理解しようと試みたり、悩んだりと人間的な部分も持ち合わせているデクスターにちょっぴり愛着も湧いてきます。
不必要なことはせず、悪人をターゲットとし、罰を下す。言うなればアンチヒーローやダークヒーローと呼ばれるものに近いです。この彼の感情の揺れ動きが魅力の一つ。
また、警察官の同僚に怪しまれていたりとドキドキハラハラな二重生活も見どころです。

個人的には、シーズン5が一番心地悪く印象に残っています。

YOUー君がすべてー
恋が執着に変わる時、男は想像もできないほどの異常なストーカーへと変貌する!
原作 | キャロライン・ケプネス |
製作総指揮・脚本 | セラ・ギャンブル グレッグ・バーランティ |
キャスト | ベン・バッジリー エリザベス・レイル シェイ・ミシェル ルカ・パドヴァン ジョン・ステイモス…他 |
配信 | NETFLIX |
NYにある書店の店長として働くジョー・ゴールドバーグ。彼はある日、書店にやって来た大学生のベックに一目ぼれ。ネットを駆使し、あの手この手で彼女の素性を調べ上げたジョーは、言葉巧みに彼女の生活に忍び寄っていく…
一見、物腰柔らかくスマートな好青年ジョー。でもその正体は、歪んだ愛情と支配欲を持つ危険なストーカー。ネットで調べ、日常に侵入し、邪魔者には容赦なく手を下す…その姿はまさにサイコパス。
にもかかわらず、彼は子どもに優しく接したり、時折見せる人間味が不思議な魅力。絶対に共感しちゃダメなはずなのに、どこか惹かれてしまう…そんな危ういバランスがこの作品の中毒性を生んでいます。
元恋人・キャンディスの謎、ベックとの危うい関係、そしてジョー以外の「ヤバすぎる」人物たちの登場で物語は予想外の方向へ転がっていきます。
ジョーの心の声にツッコミを入れながら観る感覚は、まさにブラックユーモア×サイコスリラー。重すぎず、でも軽すぎない。奇妙なバランス感覚がクセになる一本です。
このサイテーな世界の終わり
ある衝動を秘める少年が最初のターゲットにしたのは、社会に怒りを抱える少女だった…
監督 | ジョナサン・エントウィッスル |
キャスト | アレックス・ローサー ジェシカ・バーデン ジェンマ・ウィーラン スティーヴ・オーラム ウンミ・モサク クリスティン・ボトムス…他 |
配信 | NETFLIX |
ジェームズは、自分をサイコパスだと信じてやまない闇を抱える少年。衝動を抑えられない彼の犠牲者は主に動物だった。しかし、彼の欲求は増していくばかり。次の獲物を選りすぐりしていた時に同級生のアリッサと成り行きで家出をすることになるのだが…
17歳のジェームズは、父親と二人で暮らし、学校や社会にどこか馴染めずにいます。人との関わりに興味が持てず、内に秘めた衝動的な思いを抱えながら過ごしていた彼の前に現れたのが、同級生のアリッサ。
アリッサは、社会や周囲のルールに強く反発しながらも、どこか不器用に生きている少女。喜怒哀楽が激しく、自分の感情を隠そうとしない奔放な一面を持っています。
真逆と言ってもいい二人ですが、社会や大人に対する怒りや虚しさ、心の隙間を埋めるように二人の距離が縮んでいきます。想像とはまったく違った物語展開ではありましたが、意外にも切ない青春ものとして心を掴まれました。
その逃避行は衝動的で無計画。そして、空き家と思っていた豪邸に忍び込んだことから、思いがけない出来事に巻き込まれていく…まさに悲劇の始まりです。
この作品は、ブラックコメディの要素を含みながらも、どこか物憂げで、不器用な若者たちの“心の旅”を描いたロードムービーとしての魅力も感じられます。「テルマ&ルイーズ」や「ボニー&クライド」のように、現実から逃れようとする若者たちの一瞬の自由が、かえって痛切な余韻を残しています。
特に印象的だったのは、シーズン1の終わり方。あのラストの切なさこそが、この物語の美しさであり、個人的には続編よりも、あそこで物語が完結していた方が好きだったなという印象です。

1話20分程と短く観やすいところも最高!
ベイツ・モーテル
ヒッチコック「サイコ」に登場するノーマン・ベイツ。彼が如何にして“あのサイコ”へと変貌を遂げたのか…
原作・元ネタ | ロバート・ブロック 「サイコ」 アルフレッド・ヒッチコック 「サイコ」 |
製作総指揮 | カールトン・キューズ ケリー・エーリン |
キャスト | フレディ・ハイモア ヴェラ・ファーミガ マックス・シエリオット オリヴィア・クック ネスター・カーボネル…他 |
配信 | × |
夫を亡くしたことをきっかけに、オレゴンの田舎町に引っ越してきたノーマと息子のノーマン。中古のモーテルを購入し、人生のやり直しを図る中、モーテルの元オーナーのキースと折り合いがつかない。ある夜、侵入してきたキースにノーマが襲われてしまう。その時、ノーマンは…
この作品の特徴は、歪な親子関係。
たしかに主役は若かりし頃のノーマン・ベイツですが、彼の母ノーマが強烈な印象を残します。美しく魅力的な女性ながらヒステリックで過保護すぎる一面もあるノーマ。
息子のノーマンは、母親に逆らえない気弱な一面を持ちますが、危なっかしいノーマを放っておけない母親想いの息子。それとは別に同級生で人気者のブラッドリーに恋をしたり、逆にエマという女の子から好意を向けられたりと普通の年頃の男の子でもあります。
行き過ぎた共依存の二人の関係ですが、この親子が迫りくる困難や苦悩と闘い、強くたくましく生きていく姿を描いている作品とも言えます。ただし、その人生は前途多難。最悪な方向へと舵を切っていくこととなるのです。
徐々に“ノーマン・ベイツ”のもう一つの顔としての片鱗が現れ始めます。
また、周りを取り巻く人々も一癖も二癖もある人物ばかりです。個人的には、異父兄のディランが一番好きです。町全体が異常と言ってもいいこの作品の中で、唯一常識と人情を持ち合わせているキャラクターと言えますね。
アメリカン・クライム・ストーリー/ヴェルサーチ暗殺
「ヴェルサーチ」の創業者ジャンニ・ヴェルサーチの命を奪った犯人は一体…
製作総指揮 | ライアン・マーフィー |
キャスト | ダレン・クリス エドガー・ラミレス リッキー・マーティン ペネロペ・クルス コーディ・ファーン…他 |
配信 | × |
1997年、ファッションデザイナー「ヴェルサーチ」のジャンニ・ヴェルサーチがマイアミの豪邸で何者かに襲われる。容疑者として浮上したのは、アンドリュー・クナナンという男。彼は、すでに4人の命を奪い、容疑者として指名手配されていた…
この作品は、イタリアの高級ファッションブランド「ヴェルサーチ」の創業者が、マイアミの自宅前で命を奪われた衝撃的な実在の事件をもとに制作されています。
クナナンは、自己顕示欲が強くナルシストであり、同時に嘘を平気でつき、人の心に入り込む巧みさを持っていた極めて複雑な人物。高いIQを持ちながら、精神的には未成熟な子供のようでもあり、知性と未熟さのねじれが見られます。
この時代、同性愛を公にするにはあまりに冷たい風が吹く。クナナンと同じくゲイだったジャンニ・ヴェルサーチとの風当たりの差は大きく、「認められたい」「尊敬されたい」そんな嫉妬心や妬みの矛先がヴェルサーチに向いたのかもしれません。
個人的には、クナナンに同情することも感情移入することもできず、物語に深く入り込めないまま中盤を迎えました。そんな中で、若く夢に溢れ、これからの人生を楽しむ権利があるはずの優しい青年の命が奪われる場面に直面し、ただただ悲しく、ショッキングな瞬間でした。
主演のダレン・クリスは、感情の揺れや葛藤、そして好感が持てない微妙なキャラクターを見事に演じ切っています。「GLEE」の彼とはまったく異なる一面を見せてくれていて、まさか彼がこんな役柄を演じる日が来るとは思いもしませんでした。(笑)

ちなみにシーズン1のO・J・シンプソン事件も法廷劇で面白いよ!
ダーマー
ミルウィーキーの食人鬼と呼ばれたシリアルキラーの本性とは!?
製作総指揮 | ライアン・マーフィー |
キャスト | エヴァン・ピーターズ リチャード・ジェンキンス ニーシー・ナッシュ モリー・リングウォルド マイケル・ラーンド ペネロープ・アン・ミラー…他 |
配信 | NETFLIX |
1991年、ジェフリーはナイトクラブで出会った若い男性を自宅に招き入れた。しかしその後、状況は不穏な方向へと進み、彼の行動に恐怖を感じた男性は、隙を見て外へ逃れ、警察に助けを求める。通報を受けてジェフリーの部屋に踏み込んだ警察は、そこで予想もしなかった異様な光景に直面する…
物静かで落ち着いた、ごく普通の男性ジェフリー・ダーマー。しかし彼は、多くの若者の命を奪ったことで知られ、「ミルウォーキーの食人鬼」という異名を持つ人物です。
他の犯罪者とは異なり、彼の動機には快楽よりも、歪んだ形の愛情や「ずっとそばにいたい」という強い願望からきています。また、通常の犯罪とは異なるおぞましく異様な行為も含まれており、その静かな狂気は作品全体に不気味な緊張感をもたらしています。
じめじめとした作品の雰囲気は、静かな狂気をまとい、画面越しでさえ腐敗臭が漂ってくるような恐ろしさや気持ち悪さを上手く表現しています。
本作は、まだ社会的理解が十分でなかった同性愛や、人種間の偏見・差別がもたらした社会の問題にも目を向けています。特に被害者の多くが社会的に弱い立場にあったため、当時の警察の対応が十分でなかった点も描かれています。
孤独が生んだ悲劇に注目が集まる一方で、被害者の存在とその尊厳も忘れてはならないという深いメッセージが込められています。
番外編
ダブル主人公または準主役の位置にいるサイコパス
ハンニバル
ハンニバル・レクターVS元FBIプロファイラーのウィル・グレアム
原作 | トマス・ハリス 「レッド・ドラゴン」 |
脚本 | ブライアン・フラー |
キャスト | マッツ・ミケルセン ヒュー・ダンシー ローレンス・フィッシュバーン カロリン・ダンヴァース ケイシー・ロール…他 |
配信 | U-NEXT |
若い女性を狙った凶悪事件が続き、捜査に行き詰ったFBI捜査官のジャックは、プロファイラーのウィル・グレアムに協力を仰ぐ。しかし、犯罪者の頭の中に入る度に彼の精神は蝕まれていく。そこで、著名な精神科医ハンニバル・レクターにウィルの精神鑑定を依頼するが…
スーツに身を包み、物腰は穏やかで紳士的。一流の精神科医としての顔を持つハンニバル・レクターには、誰もが気づかぬ裏の顔がありました…それは冷酷な知能犯としての一面です。
作中では、美しい料理の数々を振る舞うレクター博士の姿がたびたび登場しますが、頭をよぎるのは、「もしこの料理が、私の想像している通りのものだったとしたら……」という恐ろしい疑いの念。
本作では、犯罪者の心理に深く共感してしまう捜査官ウィル・グレアムと、そんな彼を巧みに翻弄し、引き込もうとするレクターとの複雑な関係が物語の軸になっています。「理解してほしい」「そばにいてほしい」と願うレクターの執着心と、それに抗おうとするウィルの葛藤と揺らぎ…二人の危うい絆が、このドラマを濃密なものにしています。
シーズン1から3にかけて、彼らの心理的な駆け引きと関係の変化を丁寧に描きつつ、他にも特異な犯罪者たちが登場します。
映像は美しくもショッキングで、スリルと美学が交錯するこの作品は、サスペンスや心理劇が好きな方に特におすすめですが、過激な描写にはご注意を。

ミスター・メルセデス
ミスター・メルセデスVS引退老刑事ビル・ホッジズ
原作 | スティーブン・キング |
企画 | デビッド・E・ケリー |
キャスト | ブレンダン・グリーソン ハリー・トレッダウェイ スコット・ローレンス ジャスティン・ルーペ ジャレル・ジェローム…他 |
配信 | U-NEXT |
盗まれたメルセデス・ベンツが人々の列に突っ込み、16人もの命を奪ったメルセデス・キラー。ビル・ホッジズ刑事が捜査に乗り出すが、事件は迷宮入りしてしまう。その2年後、警察を定年退職したビルのもとにメルセデス・キラーから挑戦状が届き…
スティーブン・キング原作のサスペンススリラー。
“メルセデス・キラー”の異名を持つブレイディ・ハーツフィールドは、家電量販店で働く、ごく普通の青年。しかし彼は、過去に無差別に命を奪い、その後も担当刑事に挑発的なメッセージを送りつけるなど、自己顕示欲の強い一面を持つサイコパスです。
また彼は、アイスクリーム販売車に乗り、子どもたちにアイスを配るなど一見すると微笑ましい光景の裏で静かにホッジズたちの動きを見張っているのです。ITのペニーワイズのようにスティーブン・キング作品に共通する、“子どもに親しまれるものにひそむ恐怖”がここでも登場します。
また、ブレイディと母親との関係は、常識の枠を大きく逸脱しています。その異様さは彼の人格形成に大きな影を落とし、過酷な家庭環境が生み出す歪みは、「ベイツ・モーテル」の比ではないです。
シーズン1から3を通して本作はサスペンス、ミステリー、そしてスティーブン・キングらしい超常的な要素まで幅広く楽しめる構成になっています。
メルセデス・キラーを追いながら、アルコール依存や孤独と向き合っていたホッジズが、人とのつながりを取り戻していく過程も描かれており、シリアスな展開の中にも心温まる瞬間が散りばめられています。

上記2作品は、捜査官VSシリアルキラーでも紹介しています。
まとめ
今回は、サイコパスが主人公の作品を集めてみました。いかがだったでしょうか?
サスペンスやミステリー、ホラーなど様々なジャンルで登場するサイコパス。恐ろしくも作品にピリッとしたスパイスを与えてくれます。
フィクションはやはり、エンターテイメント性があり、様々な角度から“物語やキャラクター”を楽しむことができるのに対し、実話ものは、じめじめとした描写が多く、犯罪者の精神や異常な性癖など“人間”に集中して描いているように感じます。
みなさんも、もし観たことない作品があったらぜひ、見てみてください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。