この記事には、ネタバレが含まれますので、ご注意ください。
複雑な時系列かつ交差する時代、湖の美しさと不気味さ、秀逸な脚本にいつの間にかくぎ付けになってしまいます。見ごたえのあるサスペンスフルなタイムリープ・スリラーでした!
映画情報
作品名 | 『キャド―湖の失踪』 原題:Caddo Lake |
監督・脚本 | ローガン・ジョージ セリーヌ・ヘルド |
プロデューサー | M・ナイト・シャマラン |
キャスト | ディラン・オブライエン エリザ・スカンレン ローレン・アンブローズ エリック・ラング サム・ヘニングス |
配信 | U-NEXT |
あらすじ
テキサスとルイジアナ州の境界に位置するキャド―湖に暮らすエリーは、母と継父、そして義妹のアンナと暮らしていた。ある日、母との喧嘩で家を飛び出したエリーは、友人の家に泊めてもらうが、そんなエリーを追いかけたアンナが失踪してしまう。一方、パリスという青年は数年前に母親を不慮の事故で亡くしているが、その死因に納得できずにいた。なんとか母の事故の原因を追究しようとするのだが…
感想(ネタバレなし)
M・ナイト・シャマラン監督が製作に携わっているが、監督特有のTHEどんでん返しのような作風ではなく、脚本が秀逸で良質なミステリー・スリラーといった感じです。
メインとなるのは、『母親を事故により亡くしたパリス』と『失踪してしまった少女アンナを探す家族』と2つの軸で描かれていますが、他にもあっと驚くような設定や様々な仕掛けが施されています。
美しくも不気味なキャド―湖で起こる不可解な出来事。
ワニの切断遺体
少女の失踪事件
盗まれたボート
絶滅したはずの蛾や狼
次々と何か謎の力がうごめくこの土地で翻弄される人々。
登場人物も情報量も多く、しっかりと台詞や内容を追いかけていないと置いて行かれる可能性があります。時系列情報を整理し、パズルのようにピースを当てはめていくと全容が見えてくる難解さがあります。
「ん?どうゆうこと」「そういうことか!」の連続ですが、それが癖になり、最後まで駆け抜けるパワーというか、惹き付ける演技力とストーリの意外性、独創的で美しくも切ないタイムリープの傑作です。
※ネタバレ
失踪したアンナは、エリーの義理の妹であり、祖母でもあった。そして、亡くなったパリスの母こそがアンナその人だった。
と言っても意味が分かりません(笑)簡単に整理してみましょう!
1.2022年に失踪した少女アンナは、2003年から来たパリスにより助けられるが、2022年の未来から1952年の過去へと時間を渡ってしまう。
2.1952年で新たな生活を始めたアンナは立派に育ち、教師になる。アンナはその後、ベンジャミン・ラングという男性と出会い、結婚。そして、パリスを生む。
3.1999年、母のアンナとパリスは事故で車ごと水没、アンナは溺死してしまう。
4.2003年、パリスは、母の死に疑問を抱きながらも、恋人のシーと未来を語り合う。しかし、パリスは時空の歪みに触れ、行方不明となる。
5.2005年、パリスが失踪したため、一人エリーを育てているシー。この2005年にエリーがタイムスリップし、アンナの生存と自身の出生を知ることになる。そして、戻るためにロープで目印をつけた。
6.一方パリスは、1952年から1999年に行き、母親を助けようとしたが、エリーが印した帰り道のロープを伝ってしまう。
7.2022年にたどり着いてしまったパリス。エリーのボートに乗っていたため犯人と勘違いされてしまう。保安官たちに囲まれ、川に飛び込むがダムが決壊、パリスは命を落とす。
8.エリーとセレステは、パリスが私たちを捨てたのではないと涙する。そして、エリーからするとダニエルは曽祖父に当たる。とどのつまり、彼らは本当の家族だった。
上手く整理できない(笑)
張り巡らされた伏線
- タイムリープが途切れる時、そこに対象物があると刃物のような鋭利な切断面が現れる。ワニの遺体は、タイムリープが途切れた産物だった。
- 消えたボートは、エリーが初めて時間を遡った際に自ら盗んだもの。
- 絶滅したはずの蛾や狼は、過去との繋がりを示すサインだった。
感想(ネタバレあり)
観始めた時は、まんまと騙されました!
というのも、エリーやアンナ、そしてパリスの時代が同じだと思っていたから。
新しい橋と古びた橋、二つのネックレス、少しずつ違和感を感じ始めるこの感覚が楽しい。
奇跡?運命?
奇しくもアンナ同様、パリスも溺死している。
時間を越えるたびに耳からの出血があることから何かしらの負担と犠牲を伴っていることがわかる。
パリスとアンナは、行き交った時間やずらした時間が大きい。
結果的に未来を変えている中心人物のため、代償が”死”だったのかもしれない。
奇跡のようでもありましたが、私にはむしろ、湖の呪いのようにも感じました。
母親のアンナの死から始まり、パリスの死で終わる。
美しい家族の物語でありながら、切なく悲しいラストでした。
まとめ
作品を観ながら、時系列を考えたり、明かされるカラクリをなるほど!と“気付き”を楽しめる方におすすめです。
また、湿地帯の未知な美しさ。船を自由自在に操り、飲み込まれそうな薄暗いが妖艶な湖での暮らしが怪しくも魅力的。どこか魅惑的に感じるんですよね。
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スコア : ⭐️⭐️⭐️⭐️
「メイズ・ランナー」で華々しく登場したディラン・オブライエン。近年は、今作を含め「ラブ & モンスター」などの隠れた名作?(少なくとも私はそう思っている笑)に登場している印象があり、私の中では大注目の俳優さんです。
みなさんも、脳みそをフル回転させてみませんか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。